最近、「スペシャルティコーヒー」と掲げた喫茶店やカフェをよく目にするようになりました。いかにも「特別なコーヒー!」という印象を受ける名前ですが、そもそも「スペシャルティコーヒー」とはどういったコーヒーなのか、普通のコーヒーとは何が違うのかと聞かれると、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
スペシャルティコーヒーのことを知っていれば、もっと美味しいコーヒーを楽しむことができますよ。
今さら聞けない、「スペシャルティコーヒーってなんだろう?」にお答えします。
スペシャルティコーヒーとは?
スペシャルティコーヒーとは、一言で表すと「とても美味しくて高品質なコーヒー」のことです。
ただ「美味しい」というだけでなく、コーヒー豆の栽培から収穫、輸送、保管、生産加工など、一杯のカップに注がれたコーヒーが飲み手の前に届くまでの全ての行程において適切な品質管理が行われているコーヒーをカッピング(テスト)・評価して、一定基準以上と評価されたのもののみが「スペシャルティコーヒー」と名乗ることがでます。
基準をクリアしたスペシャルティコーヒーは、コーヒー豆の生産量のうち約1割程度とされているため、その評価の厳しさ、希少性がわかりますね。
スペシャルティコーヒーの判断基準(尺度)
「スペシャルティコーヒー」という言葉が生まれて30年以上になりますが、実は国際的な判断基準というものはありません。世界各国にスペシャルティコーヒー協会が設立されていて、それぞれに独自の判断基準を設けており、その判断基準も毎年のように見直されています。
数ある協会の中でも特に有名なものが、1982年発足の米国スペシャルティーコーヒー協会(SCAA)、2003年発足の日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)、そして SCAAとの統合が期待されている英国スペシャルティーコーヒー協会(SCAE)の3つです。
私たちが普段目にするスペシャルティコーヒーは、日本スペシャルティコーヒー協会の基準に則ったものでしょう。
日本スペシャルティコーヒー協会では、人にも地球にも優しい方法で栽培されたコーヒー豆であり、栽培から流通までトレーサビリティが明確で、コーヒー豆の劣化や欠点豆の混入がないことを大前提とし、収穫から6ヶ月以内に焙煎・抽出されたコーヒーを以下のような基準でカッピングして、各項目の総計が80点以上のものをスペリャルティコーヒーと認定しています。
なお、味の評価に関しては、現在でも「日本人の口に合う味」が追求されており、今後も基準内容が建設的に変更されていくことでしょう。
日本スペシャルティコーヒー協会の評価基準
・カップに汚れやコーヒーの風味を損なうような欠点がなく、コーヒーのテロワール(地域特性)が表現されるのに必要な透明性を有していること
・均一によく熟した状態で収穫されており、辛さや渋み、刺激のある酸味などがなく甘さが感じられること
・刺激や不快さを感じるものではなく、繊細でキレのある爽やかな酸味が感じられること
・コーヒーを口に含んだときに感じられる舌触りや濃さ、粘り気、重さ、密度、収斂性(しゅうれんせい)感触といった質感の品質が良いこと
・コーヒーの味や香りで栽培された土壌・気候・栽培技術など、そのコーヒーの持つ独特のテロワール(地域特性)が表現されていること
・後味の印象が良いこと
・コーヒーの風味の調和が取れていて、過不足のないもの
スペシャルティコーヒーの特徴
品質や味、使用するカップにいたるまで厳しく審査され、それにクリアしたコーヒーだけが認定されるスペシャルティコーヒーには、次の4つのような特徴があります。
・トレーサビリティが明確
・一般的なコーヒーとは明確に違う個性的な味わいがある
・虫食い、未成熟、カビ、発酵、異物混入などの欠点豆が極めて少ない
・カッピングにより品質や味が保証されている
スペシャルティコーヒーの基準は国により異なりますが、以上の4点はどの国のスペシャルティコーヒーでも共通した特徴です。味の好みも人それぞれですが、個性的なコーヒーを飲んでみたい方や品質の高い豆を使用したいという方には、スペシャルティコーヒーを試してみる価値ありと言えるでしょう。
コーヒーの格付け「コーヒーピラミッド」
コーヒーには、スペシャルティコーヒー以外にも色々な基準が設けられており、そのグレードによって形成されているのが「コーヒーピラミッド」です。
コーヒーのグレードを決める評価基準は、SCAJの評価基準「ベスト・コーヒー・オブ・ザ・イヤー」とも言えるカップ・オブ・エクセレンス(COE)という国際的なコンテストの評価基準が元になっています。
グレード、つまり評価の高いコーヒーから順に、
・Top of Top(トップ・オブ・トップ)
・Top Specialty Coffee(トップ・スペシャルティコーヒー)
・Specialty Coffee(スペシャルティコーヒー)
・Premium Coffee(プレミアムコーヒー)
・Comercial Coffee(コマーシャルコーヒー)
というグレードに分かれており、「ピラミッド」という名前からもわかるようにグレードが高くなればなるほど希少性も増し、トップ・オブ・トップに至っては全世界のコーヒー生産量のわずか数%にも満たないと言われています。スペシャルティコーヒーよりもさらに希少性や品質の高いコーヒーがあるなんて、驚きですよね。
ただ、スペシャルティコーヒーの評価基準でもご紹介したように、コーヒーのグレードが高くなればなるほど、ただ単純に味が良いだけでなく使用されているカップやトレーサビリティ、テロワール(地域特性)など、付加価値が上昇していく傾向があります。
そのため、付加価値を重視せず味だけを求めるのであれば、グレードの低いコーヒーでもグレードの高いものと遜色のない味わいを楽しむことができます。
そのコーヒー豆のバックグラウンドにまで思いを馳せて味わいたいという方にはスペシャルティコーヒーなどハイグレードのコーヒー、とにかく美味しければ良いという方には味が好みで価格も手頃なコーヒーと、付き合い方によって好みの豆を選べるのもコーヒーの魅力です。
あなたらしい極上の一杯を探してみてくださいね。