感染症というと、インフルエンザなどを思い浮かべる方が多いと思いますが、最近では食中毒のひとつとされる“カンピロバクター”に感染する方が増えています。
お子様や高齢者が感染すると合併症などが心配になりますので、しっかりと原因菌への知識や症状、予防法などを把握しておく必要があるでしょう。
今回はこの“カンピロバクター”をテーマに感染経路や症状、感染を防ぐ方法まで詳しく解説していきたいと思います。
目次
原因菌の「カンピロバクター」とは?
おもに鶏の腸内に存在していると言われていますが、牛・豚なども例外ではありません。普段食す鶏肉といえば、市販されているものがほとんどだと思いますが、その多くが汚染傾向にあることも分かっています。
お肉を購入した後は、基本的に冷蔵庫にて保存することが当たり前ですよね。しかし実はその冷蔵庫内こそ、この菌の生存日数を高める環境にあるのです。普段当たり前のように食肉や野菜などを保存している冷蔵庫内で菌が生きていると思うと、恐ろしく感じてしまいますね。
では、その他の特徴についてもみていきましょう。
好発年齢
この感染症は、基本的にどの年齢層にもっとも多いと断定できるものではなく、幅広い世代で発症しています。ただ、発症のピーク時期としては10代から20代といわれており、男性の方が感染傾向にあるともされています。
流行する時期
毎年行楽シーズンに発症する方が多く、ゴールデンウイークがある5月や夏休みのある7月、紅葉シーズンの10月前後に患者数が増加することが分かっています。
暖かかくなる5~7月は食品の傷みが気になる時期ですね。新鮮なお肉でも、半生の状態だと食中毒になる危険性は高くなるため、注意が必要です。
カンピロバクターの感染経路と症状
ではこの菌はどのように感染し、症状にはどんなものがあるのか、詳しくみていきましょう。
感染する経路
1.食中毒
最も多いのは、生食や加熱が十分でないお肉を食べてしまったことで感染するケースです。先述したように、食肉に生存している菌から感染することが多く、その場合は生のタタキやレバーなどが原因になることがほとんどです。
また、井戸水などに含まれていることもあるため、安易に口にしないことも大切です。
その他には、まな板や包丁など、菌を保有しているお肉を調理した後の器具から感染することもあります。カンピロバクターを持った豚肉を切り、その後同じ器具で食材に触れれば当然感染してしまいます。
2.接触感染
カンピロバクターは、人間だけに感染するわけではなく、動物が菌を保有していることもあります。例えばペットとしてよく飼われている犬や猫がそうです。
わんちゃんや猫が腸内に保菌していたとすると、そのフンや尿を処理する際に手に菌が移ってしまうこともあるのです。これは人にも言えることで、感染者の便などの処理をした後、除菌が十分でなかった場合には感染することがあります。
とにかく感染者が触れたものすべてが危険だということです。
症状
感染している人や動物すべてが感染対象となることが分かりましたが、ではカンピロバクターに感染しているかどうか、見分けられる症状はあるのかについても確認していきたいと思います。
潜伏期間
基本的には2、3日といわれていますが、まれに1週間程度潜伏することもあります。この期間は症状があらわれないため、当人も他者も気づくことができません。
風邪に似た初期症状
初期には発熱や頭痛、寒気やだるさ、筋肉痛などの風邪と似た症状があらわれ始めます。単に風邪、もしくはインフルエンザと勘違いされる方も多く、発見が遅れてしまうこともあります。
重症化した場合
風邪でも下痢を引き起こすことはありますが、カンピロバクター菌に感染し、重症化した際には血便や水溶性下痢が大量に出ることも。
あまりにも下痢が酷い、血便が見られた場合には、他の病気が疑われる可能性もあるため早急に診察してもらうことが大切でしょう。
合併症について
下痢をしてから7日~21日程度後に手や足、顔にマヒが出たり、呼吸が困難になるといった症状が出る“ギランバレー症候群”になってしまうケースも。
抵抗力や免疫力の低い子供や高齢者は特に注意が必要なので、重症させる前に受診する必要があります。ある程度の免疫力が備わっていれば合併症の心配はあまりありませんが、体調が優れない時は成人でも可能性がゼロとはいえないので、体調管理に努めて下さい。
カンピロバクターの感染を防ぐ方法
感染経路のところでも少し触れましたが、カンピロバクターを防ぐためには加熱と消毒が大切です。
口に入れるものから感染を防ぐ方法
鶏モモ肉のタタキや刺身など、生で食べるお肉ならではの美味しさはありますが、予防のためには避けておくことが無難でしょう。万が一菌を持っている鶏の生肉であった場合には感染は免れません。
また、多いのがしっかり加熱したつもりになっていること。夏場はバーベキューを楽しむ家族も多いと思います。炭火でしっかり焼いたつもりでも、中が半生だったこと、よくありますよね。これも危険です。
特にお子様に食べさせる場合は塊肉を避け、薄く切ったお肉や火が通りやすいように小さめに切ったお肉にし、中まで火が通っているか調理ばさみなどで半分に切り中を確認してから食べさせるようにしましょう。
調理器具は消毒を
お肉に触れたまな板や包丁は、洗ってから使うことは当然ですが、きちんと洗剤で消毒してから使うことを基本として下さい。水ですすいだだけでは菌が付着している恐れがあります。
熱湯やエタノールを用いて消毒するとより効果的です。
さらに、保存容器も分けるようにすることがポイント。すぐ火を通すからと、同じお皿に生肉と野菜などを盛り付けてしまうと、菌が広がってしまいます。
接触感染を防ぐ方法
手洗い、うがい、消毒が大前提になります。特に調理を始める前は注意するようにして下さい。万が一手に菌が付着している場合、そのままの状態で食材や器具に触れると二次感染の可能性を高めることになります。
自宅でお子様やご家族が感染されたときには、便座やトイレの壁、床はもちろん、ドアノブに至るまで、エタノールで消毒しておきましょう。ペットも同様です。
幸いこの菌は消毒剤への抵抗性が弱いため、市販の消毒用剤で十分効果を与えることが出来ます。普段から常備しておくとよいでしょう。