「酒は百薬の長」という言葉があります。風邪を引いたらお酒を飲んで体を温め、早く寝るという人もいますが、本当にお酒は風邪に効くのでしょうか。
結論を言うと、風邪を引いた時にお酒を飲むことはおすすめできません。風邪の時にアルコールを摂取すると体調が回復するのではなく、むしろ風邪を悪化させてしまう可能性があるのです。今回はアルコールと風邪の関係について詳しく解説いたします。
目次
アルコールで風邪が悪化する理由
風邪の時にお酒を飲むと症状が悪化する恐れがあります。アルコールが風邪を悪化させる主な理由は5つです。
免疫力が低下する
風邪を治すためには免疫力を高めることが大切です。免疫細胞の働きを活発化させると体からウイルスが排出されて風邪が回復します。この免疫反応と大きく関係する臓器が肝臓です。肝臓は体内の有害物質を解毒し、免疫力を高めるために働きます。
ところが、お酒を飲むと肝臓はアルコールの解毒のために力を使います。そのため、風邪の原因であるウイルスと戦う免疫の機能を高められず、風邪が治りにくくなるのです。
また、日ごろからお酒を飲みすぎてしまうことが多い人は肝臓がアルコールの解毒のために疲弊し免疫力が低下し、風邪にかかりやすくなります。ストレス発散程度にお酒を飲むのは良いですが、飲みすぎには十分な注意が必要です。
水分が不足する
風邪を引いた時は水分補給が大切です。適切に水分を補給しなければ、発熱による汗や下痢、嘔吐などによって体内の水分量が減少し、脱水症状に陥る危険性があります。
また、風邪の原因であるウイルスの侵入を防ぐ働きをする気道粘膜の活動にも水分が必要です。それにもかかわらず、アルコールを摂取すると水分が不足します。
飲酒で水分不足になる主な原因はアルコールが利尿を抑えるホルモンの働きを抑制するためです。このホルモンの活動が抑制されれば、尿の量が増えて水分不足につながります。さらに、アルコールには体温を上げたり、代謝を高めたりする機能もあるため、汗の量も増えて体内の水分量が減少します。尿や汗によって体内の水分が不足すると風が悪化したり、新たにウイルスに感染したりするのです。
睡眠の質が下がる
風邪を治すためには睡眠が大切です。ぐっすりと寝ることで体力が回復してウイルスに対する抵抗力も高められます。それなら、「お酒を飲んで寝よう」と思う方もいるかもしれません。実際、眠りにつくために飲酒する人も多いです。
しかしながら、お酒を飲むと睡眠の質は下がります。アルコールには覚醒作用があるため、眠りが浅くなったり、睡眠中に起きてしまったりするのです。
また、アルコールを飲むとたくさんの尿が出ます。トイレに行きたくなると睡眠が浅くなってしまいます。ぐっすりと眠ることができなければ、体力も低下し、風邪の回復に逆効果です。
のどが傷つく
風邪を引くとウイルスによって喉が炎症を起こします。喉が痛くなったり、声が枯れたりするのは喉がウイルスと戦うために炎症しているためです。その場合、マスクをしたり、のど飴をなめたりと対策をします。こうすることで喉の炎症が抑えられて風邪の症状も治まってくるのです。
ところが、アルコールを摂取するとのどは刺激を受けて粘膜が傷つきます。すると、喉の痛みや炎症は悪化するのです。
また、飲酒で体内の水分が不足すると喉も乾燥します。この状態が続けば、喉の粘膜の炎症がさらに悪化します。風邪の時は喉の炎症につながる飲酒は避けたほうが良いでしょう。
栄養が不足する
風邪を引くと体はウイルスと戦います。ウイルスを体から追い出して健康になるためにはウイルスと戦う栄養が必要です。
しかし、風邪の時に飲酒をすると栄養が不足するかもしれません。飲酒をすると栄養が不足するのは胃や腸などが傷つけられ、消化が妨げられて必要な栄養素を吸収できないためです。
また、アルコールを解毒するためにたくさんの栄養が使われてウイルスと戦うための栄養が残らない可能性もあります。
アルコールが胃腸に負担をかけるとエネルギーとして使われる栄養素を吸収できなくなり、アルコールを解毒するために多くの栄養素が使われると栄養不足に陥ります。
また、アルコールの利尿作用で栄養が排出されたり、お酒で満腹になり、食事量が減ったりすることも栄養不足につながります。アルコールには元々、エネルギー源として使われる栄養素は含まれていないため、風邪を引いている間は飲酒よりも食事で空腹を抑えるように心がけましょう。
風邪薬との併用も問題!
風邪薬を服用中にアルコールを摂取するのは危険です。風邪薬とアルコールの併用で起こる問題は次のようなものです。
中枢神経抑制作用の増強
アルコールを摂取すると中枢神経抑制作用が働きます。これは眠気や運動能力の低下を引き起こす作用であり、同じ作用を持つ薬との併用は避けなければなりません。なぜなら、中枢神経抑制作用を持つ薬と併用することで、思いがけず強い作用が現れる危険性があるためです。
風邪薬との併用による悪影響
風邪薬には中枢神経抑制作用を持つものもあります。これをアルコールと併用すると次のようなことが起こります。
・薬の効き目が変わる
薬が効きすぎたり、効果がなくなったりする可能性があります。また、眠気などの副作用が強く現れることもあるため、注意が必要です。
・運動機能が低下する
思うように体が動かず、転倒することがあります。
・体の機能が低下する
ひどい場合は意識混濁や呼吸困難を引き起こします。
命を守るためにも、風邪薬を飲んでいる間は必ず飲酒を避けましょう。
風邪の時に飲んでも良いお酒
風邪を引いているときは体に優しいお茶などを飲むのがおすすめですが、お酒を飲んで落ち着きたいときは次の3種類のうちどれかを飲みましょう。
・玉子酒
・しょうが酒
・ホットワイン
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
玉子酒
玉子酒は日本酒に卵と砂糖を加えて作ったもの。卵には風邪の時に取りたい栄養素が豊富に含まれています。特に免疫力を高めてウイルスから体を守る役割のある必須アミノ酸や細菌の排出を促すリゾチームは風邪の時に役立つでしょう。
日本酒を加熱して作るため、アルコール成分も抜けており、風邪の時でも安心です。
レシピ
1.卵1つを溶き、砂糖大匙1を加えます。
2.日本酒200㏄を鍋に入れて沸騰させ、2分程度煮ます。
3.日本酒を人肌程度に覚まします。
4.3に1を加えてよく混ぜたら完成です。
しょうが酒
しょうがには殺菌作用や体を温める作用があります。また、喉の痛みをとる作用もあるため、しょうが酒は喉が炎症しているときにもおすすめです。
レシピ
1.水200㏄を沸騰させます。
2.1にしょうが少々、はちみつ少々を加えます。
3.日本酒大匙2を加えてよく混ぜたら完成です。
ホットワイン
ホットワインはヨーロッパで風邪を引いた時に飲まれているものです。はちみつには殺菌作用、シナモンには殺菌作用や鎮痛作用、解熱作用があるため、風邪の改善に効果的です。
レシピ
1.ワイン200ccとシナモン少々を鍋に入れて加熱します。
2.沸騰したら火を止め、人肌程度に冷まします。
3.はちみつで味を調えたら完成です。
好みでレモンやイチゴを加えてもおいしいです。
風邪の時は飲んでもいいお酒で温まろう
風邪を引いているときは症状を悪化させたり、薬の副作用を強めたりする危険性のあるお酒は控えるほうが無難です。どうしても飲みたくなったら、アルコールを飛ばした玉子酒やホットワイン、アルコール分が少ないしょうが酒などを飲んで体を温めましょう。汗をかいたときは体が冷えないように注意してくださいね。また着替えや水分補給をこまめに行いましょう。