まったく自覚はしていなかったのに、家族や同室の人、はたまた検診に行った歯医者で「歯ぎしりをしている」と指摘されて「えっ?!」なんて経験はありませんか?もしかすると、朝目覚めると顎や口周り、奥歯にだるさや痛みを感じるという方もいらっしゃるかもしれません。
歯ぎしりを放置していると、その不快な音で周りの人の迷惑になるだけでなく自身の体の不調にも繋がってしまいます。
今回は、そんな歯ぎしりの原因や、自力で歯ぎしりを治す5つの方法をご紹介します。
歯ぎしりは百害あって一利無し!気がついたらすぐに改善を目指しましょう。
目次
歯ぎしりの種類
一口に「歯ぎしり」といっても3つの種類があります。
実は、これが歯ぎしりを自覚しにくい原因の一つで、中には「歯ぎしり」と聞いてイメージするような音がでないものもあるんです。
また、3つのタイプが複合的に合わさった歯ぎしりも少なくありません。
1.グラインディング
「歯ぎしり」と聞いてイメージされる、歯ぎしりの代表的なタイプです。
歯を強く噛み締めたまま左右に擦り合わせるもので、「キリキリ」「コリコリ」といった不快な音が出るので、周りの人にも迷惑になってしまいます。
寝ているときに起こってしまうことが多いのですが、起きているときにも無意識にグランディングしてしまっている方もいらっしゃいます。
強い力で歯を擦り合わせるために徐々に歯がすり減ってしまい、様々な悪影響を引き起こしてしまいます。
2.クレンチング
歯を強く食いしばるもので、グラインディングと違って擦り合わす動作がないので音が出ず、本人はもちろん周囲の人も気付きにくいタイプの歯ぎしりです。
歯がすり減ることはないから安心と思われるかもしれませんが、クレンチングは非常に長い時間強い力で噛み締めているため、歯はもちろん、歯茎や顎にも大きな負担をかけてしまうので、決して害がないわけではありません。
3.タッピング
その名の通り、上下の歯をカチカチと打ち鳴らすタイプです。
歯ぎしりのタイプの中では少数派で、歯や顎へのダメージもグラインディングやクレンチングより少ないものの、やはりその音は非常に迷惑ですし、放置するわけにはいきません。
歯ぎしりの原因
歯ぎしりの原因としては、主に精神的ストレスが挙げられます。ほかにも、歯並びの悪さや生活習慣、病気によるものなど様々な原因が考えられます。
精神的ストレス
現代社会はストレス社会とも言われています。仕事に学校、そして人間関係など、人は様々な場面でストレスに晒されており、上手く発散させないと気付かないうちにストレスが蓄積して、睡眠中の歯ぎしりに繋がってしまいます。
「ストレス」というと、嫌なものや不愉快なものから受けるものと思われるかもしれませんが、就職や進学、引っ越しなどによる環境の変化や、結婚や昇進といった嬉しい出来事からも、実はストレスを受けてしまいます。
上手くストレスを発散させたり、ゆっくりと休息をとることが大切です。
歯並びが悪い
歯並びの悪い方は、噛み合わせも安定しないため歯ぎしりが起こりやすくなってしまいます。
「子供の頃から歯並びには自身がある」「子供の頃矯正した」という方もいらっしゃるかと思いますが、歯並びというのは一生変化し続けます。
体の成長や老化はもちろんのこと、虫歯の治療や歯周病、親知らず、頬杖や寝るときの向き、鞄を持つ手といった何気ない癖でも歯並びは変化していきます。
飲酒・喫煙
「飲酒は歯ぎしりが起こりやすくなる」「ニコチン依存は歯ぎしりの原因になる」と考えられています。
過度の飲酒・喫煙は、歯ぎしり以外にも心身に悪影響を及ぼしますので、ほどほどにしておくのが良いでしょう。
逆流性食道炎
胃酸が逆流して食道に上がってきてしまう逆流性食道炎。逆流した胃液で口の中が酸性に傾いてしまうため、それを中和するために唾液が活発に分泌され、それが歯ぎしりを引き起こしてしまうことがあります。
歯ぎしりが引き起こす症状や悪影響
歯ぎしりが様々な原因で引き起こされることはわかりましたが、歯ぎしりそのものはどういった悪影響を及ぼすのでしょうか?それは、以下のようなものです。
歯に多大な負担をかける
食事中に咀嚼するために歯にかかる力は1kg弱と言われています。では、歯ぎしりは何kgだと思いますか?
実は、体重50kgの成人で、咀嚼の実に100倍、100kgにも上ると言われているんです。
さらに重要なのは、歯ぎしりは一瞬力が加わるというものではなく、個人差はあるものの数分~数時間力がかかり続けるということです。
長時間に渡ってそのような力が加わり続けると、歯の詰め物が取れてしまったり、歯の表面にあるエナメル質が摩耗して虫歯や知覚過敏の原因になったり、歯の欠けやひび割れを引き起こしたり、歯を支えている歯茎を弱らせてしまうこともあります。
顎にも負担が大きい
歯ぎしりは、歯や歯茎だけでなく顎の関節にも大きな負担をかけてしまいます。
最初は顎に怠さを感じる程度ですが、歯ぎしりが慢性化するに従って徐々に痛みを感じるようになり、放っておくと顎関節症になってしまうこともあります。
顎関節症になると、初期は口を開け閉めする度に顎がカクカクと音が鳴り、悪化すると顎に痛みを感じたり、口を大きく開けることも、逆にしっかりと閉じることもできなくなってしまいます。さらに、肩・首・背中が痛んだり、頭痛がしたり、目眩や耳鳴りがするといった症状も現れ、日常生活に支障が出てしまうこともあります。
肩凝りや偏頭痛の原因になる
歯ぎしりと頭痛には深い関係があります。
慢性的な歯ぎしりによって顎の筋肉を酷使していると、そこに繋がっている頭や肩の筋肉も凝り固まってしまいます。それにより、肩凝りや偏頭痛、目の奥の痛みが誘発されてしまうことも珍しくありません。
歯周病を引き起こすことも
既にご紹介したように、慢性的な歯ぎしりは歯や歯茎に大きな負担をかけてしまいます。それにより歯と歯茎の間に隙間が発生すると歯周病が引き起こされる恐れもあります。
歯周病は糖尿病や脳梗塞、心筋症など命に関わる全身の疾患と関連があることもわかっており、低体重児早産との関連も指摘されています。
人間関係を壊してしまう恐れ
自身の全身への悪影響と同時に、家族や恋人、一緒に旅行に行った友達や同僚など、同室で寝ている人の安眠を妨害して睡眠不足にさせてしまったり非常に不快な思いをさせたりして、人間関係にも悪影響を及ぼしてしまいます。
歯ぎしりを自力で治す方法
自分にも周りにも悪影響を及ぼす歯ぎしりは、指摘されたらすぐに改善した方が良いでしょう。そんなときにまず自力でできる対策法を5つご紹介します。
1.睡眠の質を高める
質の高い睡眠は心身を健康に保ちます。
季節に合ったパジャマや体に合った寝具を使ったり、過ごしやすい温度・湿度を保つよう心掛けて、質の高い睡眠をとるようにしましょう。
できるだけ夜更かしせず、十分な睡眠時間を確保することも大切です。
2.ストレスを溜めすぎない
歯ぎしりの主原因は精神的なストレスです。
日頃からストレスを溜め過ぎない生活を心掛け、それでも溜まってしまう日々のストレスも上手に発散させるようにしましょう。
ゆっくりと入浴したり、自分の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を取り入れるのも良いですし、規則正しい生活とバランスの良い食事、質の高い睡眠を心掛けるだけで、ストレスはかなり軽減さるでしょう。
過度の飲酒・喫煙は歯ぎしりの原因になるため、ストレスが溜まっているからといって飲酒量やタバコの量を増やすのは逆効果です。
3.噛み合わせを改善する
噛み合わせは年齢やお口の状態によって一生変化していくものです。定期的な検診を受け、必要であれば噛み合わせを調整してもらうようにしましょう。
虫歯や歯周病も歯ぎしりと密接な関係がありますので、早期発見・早期治療が大切です。
4.歯や顎への負担を減らす
歯ぎしりは、寝ている間だけでなく起きているときにも現れることがあります。
仕事や作業の最中には適度に休憩を入れてリラックスする時間を取るようにし、顎や顔、首、肩などに入った力を抜くようにしましょう。
また、食事の際には左右どちらか片方だけで咀嚼せず、両方で均等に噛むように心掛けましょう。
5.意識付けと習慣化
何といっても歯ぎしりは無意識です。
そのため、いかに歯ぎしりをしないかを意識し続け、習慣化していくかということも重要になってきます。
「歯を食いしばらない」と紙に書いて目につきやすい場所に貼って回るのも良いですし、ベッドに入ってからも「噛みしめない、噛みしめない、噛みしめない……」と心の中で唱えながら眠りにつくのも良いでしょう。
習慣づけていくことで、こういった自己暗示も徐々に必要なくなっていきます。
市販のマウスピースは要注意
歯ぎしり対策商品として、薬局やドラッグストアではマウスピースが販売されています。
ただしこれが曲者で、市販品は自分で型を取って歯に合わせる必要があるのですが、上手く型が取れないと噛み合わせが悪くなってしまったり、最悪の場合矯正治療が必要なほど歯並びが歪んでしまうこともあります。
マウスピースを試してみたいのであれば、保険適用で5,000円程度ですので、歯医者さんで自分の口に合ったものを作ってもらうようにしましょう。
歯ぎしりは精神的なストレスや噛み合わせの変化、生活習慣などで引き起こされてしまうことが多いです。
原因を探り、それを解消することで歯ぎしりの改善も期待できます。しかし、症状が悪化して顎に痛みが出たり、歯が欠けたり、口が大きく開けなくなってしまっている場合には歯科医を受診するようにしましょう。
歯ぎしりを改善して、あなたも周りの人も気持ちの良い朝を迎えられるようにしたいですね。